ウェブメディア〈日経 クロスウーマン〉の連載「内田舞の○○解体新書」にて、「女性に向かない」日常に潜むバイアス、心に積もる前に」を投稿しました。
ネガティブな言葉が日常だった医学生時代
「医師は体力勝負だから女性には向かない」
これは私がかつて北海道大学医学部に在籍していたとき、同級生の男子学生から投げかけられた言葉です。それ以外にも「日本の少子化を止めるには女性が外で働かないという選択をするしかない」「本気でキャリアがほしいなら家庭を持つのは諦めたほうがいい」など、これから医師になろうとする私にとってネガティブな発言を日常的に耳にしました。
当時、北海道大学医学部は同学年100人のうち、女性はわずか15人。あれから20年以上たった2024年度を見てみると、北海道大学医学部医学科の女性の入学者割合は18.9%。では、日本全体ではどうかというと、医師全体に占める女性医師の割合は23.6%(22年、厚生労働省調べ)。経済協力開発機構(OECD)加盟国における女性医師の割合、平均5割に比べるとかなり低く、OECDの中では最下位です。海外の状況を見れば、決して職業として医師が女性に向かないわけではないと分かります。
なお、現在、私が准教授として教壇に立つ米ハーバード大学医学部の入学者は6割近くが女性です。かつては冒頭のような発言が珍しくなかったと学生に話すと、ハーバード大でそのような発言をした場合、退学させられるのではないかと言う男子学生もいますし、「看護師は医師以上に体力勝負かもしれないが、女性でいいのか?」と論理のねじれを指摘する学生もいました。